嘔吐について

 


嘔吐の症状で、当院に来院された例について4例ご紹介させていただきます。


1例目の患者さんは2歳のボストンテリアです。

何度も嘔吐するとのことで来院されました。

食欲が旺盛で、マットの一部を食べていたと飼い主様が認識されていた為、画像検査を実施いたしました。(下の画像が実際の画像です)

明らかな異物による腸の閉塞している所見が認められませんでしたので、異物が原因で嘔吐を引き起こし、頻回の嘔吐により脱水が進行した為、腸管の動きが弱くなっていると診断いたしました。

ただちに補液と胃粘膜保護剤を投与し、経過を観察しました。

その後、嘔吐はおさまり、翌日には飼い主様が異物が出ているのを直接確認されてからは、食欲も改善し、元気になりました。



次に2番目の患者さんは8ヶ月の猫さんで、数回嘔吐するとのことで来院されました。

画像検査により完全な腸管の閉塞所見(下の画像が実際の画像です)を認め、皮下補液も実施しましたが、便から出てくる様子は認められませんでした。

この猫さんが異物を食べているのを見たという情報はありませんでしたが、腸管閉塞の疑いが強い為、試験開腹を行いました。開腹してみると、異物による閉塞の状態を肉眼でも確認し、腸を切開し異物の摘出を行い、この猫さんは嘔吐もおさまり、食欲も戻り元気になり、退院されました。



3番目は5ヶ月の猫さんで、数回の嘔吐と元気がないとのことより来院されました。

画像検査では完全な閉塞は認められないものの、腸管の構造の乱れ、線状の構造物を画像で検出認めました。(下の写真が実際の画像です)

紐状異物が腸に引っかかっている可能性を強く疑い、飼い主様と相談し試験開腹を行いました。試験開腹した所、やはり腸管の中でが紐でひっかかってしまい、腸が蛇腹状になっている所見を肉眼で確認しました。ただちに腸を切開し、紐状異物による腸のひっかかりを除去しました。手術後も嘔吐はなく、しっかりご飯もたべてくれるようになり元気になり退院されました。


4人目の患者さんは3歳の猫さんで、嘔吐をして、ふらつき、口を開いて呼吸が早いとの主訴で来院されました。

来院された当初は、血栓により後肢の麻痺、痛みがあるのではないかと疑いました。

一般検査では心臓の雑音を認め、画像検査では胃内にわずかな液体貯留と胃粘膜構造の変化を認めました。心臓の内部には明らかな異常は認められませんでした。

(下の画像が実際の画像です)

レントゲン画像↓

腹部超音波画像↓

心臓超音波画像↓

検査所見を総合的に診断し、胃炎および胃潰瘍と診断しました。補液と抗生剤(二次感染予防)・痛み止め・胃粘膜保護剤の投与、絶食から徐々に食事を増やす、といった治療により少しずつ改善し、1週間ほどで、以前のように元気・食欲が戻りました。


このように、同じような嘔吐の症状でも、原因が異なるので、正確に診断し、内科的治療を行うかあるいは外科的治療を行うかを判断し治療しました。

異物の症例に関しては、3人の患者さんのうち、2人は飼主様も異物を摂取しているという認識がありませんでした。

やはり動物たちは言葉を話すことができませんから、正確な診断による治療が非常に大切になると言えます。